ラジオ深夜便 
 vol.98
 2005/5/11

 NHKのラジオ深夜便。全国で毎晩200万人以上の人たちが聴いているという深夜番組で、朝の5時までやっています。リスナーはお年寄りの人たちが中心のようですが、夜中に働きながら聴いている人たちも結構多いのです。ラジオ深夜便は、午前0時台に朗読、健康、趣味、旅ガイドなど新コーナーもでき、午前1時台には「民話」もあり、どちらかというとお年寄りを意識した番組構成となっていますが、若い人たちも結構楽しんでいます。この6時間の間、リスナーからの手紙も数多く紹介されるので親しみやすい番組になっているのでしょう。
 家の外は真っ暗で、家の裏にあるグループホームの事務室と、点滅している信号だけが唯一の灯りです。きっと誰も起きていない時間帯ですが、もしかすると布団の中にもぐりこんで聞いている近所のお年寄りもいるかも知れません。
 
 日本も高度成長期に入り、次第に夜型中心の生活になり、テレビ時代、ビデオ時代、更にパソコン時代となってラジオはかなり地味な存在。かつての深夜放送はニッポン放送が昭和30年代からやっていましたが、だんだん運転業務とか受験生とか一部の人にしか聴かれなくなっています。NHKのラジオ放送は午前0時で終了していましたが、昭和天皇が危篤・崩御という前後から24時間ラジオとして流されるようになりました。そんなことから生まれた関係で、深夜便はたしかに聴くというより、流れているという感じがします。夜の時間を流れている時間そのもの、夜というものの象徴のような気がします。そして、静かな流れゆく夜の時間に、やさしい、暖かい言葉をほしいと思う人が急激に増えてきたようにも感じます。

 このラジオ深夜便の「25時のインタビュー」に出演させていただきました。25時のインタビューは関西で文化関係で活躍する注目の人物へのインタビューという触込みで、NHK大阪放送局が製作しているものです。博物館の応接室で取材されたものを、編集して約1時間の番組になっていました。当日は聞き逃してしまい忘れていたのですが、しばらくして全国から電話や手紙を頂くようになりました。いずれもお年寄りの方ばかりで驚いたのですが、日本は本当に高齢化社会なのだと実感しましたし、手紙にはインタビューの感想はもちろんのこと、お年寄りご自身の趣味や生き甲斐、日常感じていること、静かな心境、悩みの一端などが綴られておりました。青森県から兵庫県へのアイターンに関する話、オープンしたばかりの博物館運営を心配してくれたり、激励の一文を寄せていただきました。テレビと違い、ラジオは声だけの世界なのに、心に伝わり、行動させる力があります。
 インタビューの大半は博物館建設のエピソードや家族で暮らしたモンゴルでの生活、モンゴルとの文化交流です。自分の人生に引き付けて聴いていただけたら幸いです。

 5月9日付の朝日新聞に次のようなことが掲載されていました。ラジオの深夜放送を聴いている人の多くが、50・60代のシニア層になっており、特に午前3時から5時にかけてのリスナーの約6割も占めているそうです。シニア層が深夜にラジオを聴くきっかけがラジオ深夜便で、当初からシニア向けを意識し、「ゆっくり話す」「静かな音楽をかける」などの方針を徹底。プロデューサーは「年を取ると眠れないという人が多い。将来に不安を覚える人もいる。そんなときに、音に接したいと思っていた人がたくさんいた」と話しています。