深まり行く秋 
 vol.83
 2003/10/26

 青森の秋
 青森をはなれている私にとって、青森の秋といえばやはり「菊」、それも食べられる食用菊です。東京や京都では高級料亭で見られますが、東北地方では当たり前に食べられている秋の味覚です。明治初期に短期間ですが、「菊は天皇家の象徴であるからこれを食してはならない」というお達しが秋田、青森、新潟地方で非公式に出たそうです。特に、高貴な色とされていた紫の菊は「食べるなどもってのほか」と強く禁じたそうです。紫の菊を食べるのは新潟と山形くらいでしょうか。紫の菊「もってのほか」は「天皇の御紋である菊を食べるなんて」という意味があるようです。そこで人々はせめて黄色い菊だけでもと、これにあえて「食用菊」という名をつけたところ、黄色い菊だけは食べることを許されたといいます。
 八戸も今月下旬から来月初頭にかけて菊祭りが開催され、菊の香りが街中に広がります。秋口に菊の葉のてんぷらをたくさん食べると冬に風をひかないといいます。秋の夜長に、菊の花びらをひとひら浮かせた酒をゆっくり味わうのも風情があってよいものです。

 宮城の秋
 松尾芭蕉が訪れ、あまりの美しさに絶句したと言われる景勝地、松島。季節によってぜひ訪れてほしいとっておきの場所があります。秋なら扇谷の紅葉を見たいものです。里の紅葉が終わった11月初旬には赤くなります。燃えるような深みのある赤色です。それに落ちついた気分になりたい時には「西行戻しの松」から見下ろす雨の松島がおすすめです。松の間から見える雨に煙る松島湾は、まるで墨絵の世界です。晴れた日のきらきらと光る松島湾も結構ですが、雨の松島はとても味わいがあるものです。

 そして但馬の秋
この時期になると但馬地方では日本一の霧が楽しめます。チョット高い山に登り、豊岡盆地を朝早く眺めると一面が雲海です。10月中旬並みの冷え込みを迎えると、夜の放射冷却が強い秋から初冬にかけ、河川から上る水蒸気が冷やされ、霧が発生しやすいのだそうです。切れ間から朝日が徐々に差し込むと、雲の海はざわめき、刻一刻と表情を変えていきます。風に吹かれ、日が昇るに連れ、かすみとなって消えていきます。但馬もすっかり秋が深まってきました。
 但東は但馬の東端に位置していますが、トンネルを越えると日本三景天橋立や久美浜など日本海が至近距離にあります。にぎやかな海水浴シーズンも終わり、山々が赤く染まる時、丹後半島は実りの秋を迎えています。フルーツ狩り・観光・釣り・ハイキング。そんな歓声が秋の丹後の海山に響きます。そして日本海で捕れる海の幸。特に美味しいのはアマダイです。その他、笹ガレイやハタハタ・アキイカ等で食欲を満たします。これから冬の本命松葉ガニの前に深まる秋の北近畿もお楽しみください。