我が家はバイリンガル 
 vol.79
 2003/9/24

◆ 「からやきのごんぼほり」。東北地方北部の南部地方(岩手県・青森県東部)に伝わる南部弁で、《怠け者がだだをこねる》《横着者》《酒によってくだをまくこと》の意です。七つ森通信も本当は「からやきのごんぼほり」と名付けたかったのですが、ごく一部の方にしか分からないだろうということで、無難な名前に落ち着いてしまいました。

 妻は青森県八戸市の出身ですので、本格的な南部弁を話します。青森県は青森や弘前の津軽地方が津軽弁を、八戸市や岩手県盛岡市の広い範囲で南部弁が話されています。同じ南部弁でも八戸地方では八戸弁とも呼ばれていますが、中身はほとんど同じです。
 現在でこそ標準語に近い南部弁ですが、お年寄りのなかには何回聞いても理解できない発音があります。南部弁を「ひらがな」や「カタカナ」で書いても、そのままでは発音できません。標準語の発音とは違いますし、表記不可能な言葉も多くあります。微妙なニュアンスの違い、アクセントも当然ながら違いますし、津軽弁を何の違和感もなくフランス語と似ているという人たちさえおります。発音や訛りそのものを文字情報として提供しようとするから間違うのです。

 宮城県で育った者として、学校での授業はすべて「ズーズー弁」であり、仙台弁でした。テレビが普及してから、全国どこでも均一化した言葉が話されていく中で、わが母校は相変わらず伝統的な言語を大事に伝えていました。理科・社会・英語、そして国語の授業もズーズー弁、でも不思議と教科書を読むときだけは標準語になっているのです。ただし、発音は仙台弁のままです。年配の先生は何を話しているのか聞き取れないほどの訛りでした。
 テレビのドラマでさえ、「東北・・・」という名前が付くだけで、必ずや字幕が付いたりしますが、役者の言葉は確かにズーズー弁なのですが、発音やアクセント、強弱が明らかにおかしな場合が結構あります。その度に、我が家ではその言葉はこう発音するんだとばかり、突然ズーズー弁モードになって会話が始まります。字幕を見なくても理解できるんだと勝手に優越感に浸っているさみしい家族の姿がそこにあります。
 そういう意味では我が家ではバイリンガルの集まりである、と言っても過言ではありません。東京生まれの東京育ちの人は、標準語しか使えませんが、我が家では八戸弁も仙台弁も但東弁も標準語だって使えるのです。
 東北弁を「ズーズー弁」とも呼ぶ人たちがおりますが、確かに言葉の中に濁音が多く使われます。東北弁は言葉が汚いと言われる所以でしょう。でも、どうして濁音が多いのか私たちでさえ分かりません。京都の都言葉と比較されますが、地域の風土や環境によって、言葉も大きく変化してきたことを考えれば、これも大事な文化であり、言葉によって文化を区別するような行為だけは慎みたいものです。文化の違いを理解できない人たちが多い昨今、我が家で飛び交う方言に「小さな文化の秋」を感じました。