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◆ 「秋きぬと目にはさやかに見えねども 風の音にぞ驚かれぬる」。秋をあらわす言葉は四季の中でも一番多いようです。そして、秋を好む人たちが多いのも事実でしょう。今年は冷夏に泣かされ、果物泥棒が横行した年で、農家にとっては大打撃の一年です。食卓に並ぶ野菜も高騰し、心地良く冷えてきた秋風とは裏腹に、家庭の懐事情も寒々としたものです。
田舎暮らしをしていると、人は秋を自然の移ろいの中で見つけます。青く澄み渡った高い空、爽やかな風、頭を垂れた稲穂、いわし雲、虫の音などです。また、人によっては阪神タイガース優勝の秋であったり、実りの秋、食欲の秋、味覚の秋、スポーツの秋、読書の秋、芸術の秋、天高く馬肥ゆる秋だったりします。誰の言葉か知りませんが、「秋は人を詩人にする」と言われ、我が家の庭先で小さな秋を見つけたかと言えば文学青年になったりするものです。夏に比べて日暮れが早まったこと、これから迎えるであろう厳しい冬への誘いが人生と重ねられるのでしょうか。人の気持ちや体は適度なバランスを保ちながら生きており、そのバランスが崩れると心身の病気になります。そんな調和作用をしてくれるのが、秋の意味合いなのでしょうか。だとすれば、いい音楽や読書の秋と言われる理由が理解できます。
◆ 文学的には一年の中で秋が一番夜が長い季節として扱われます。現在であれば12月の冬至なので、本来は冬なのでしょうが・・・。暖房の発達していなかった昔は比較的早く就寝することから、すごしやすい季節の中では秋の夜が一番長いことになります。せっかくの季節をダラダラ過ごさせないようにするため、読書の秋だ、芸術の秋だと称しては何らかの文化的活動をしなさいとばかりに秋に大合唱が起きるのは何故なのでしょう。本来、文化的な活動に季節は関係なく、いまや生涯学習活動は年間を通して盛んに行われています。
そもそも11月3日が文化の日として制定されたことも理解しにくいことです。一般的には様々な文化歴史に親しみ、健全な心身・情緒を育む日として祝日になっており、
この日全国各地では賑やかな文化の祭典が行われます。昭和23年7月20日に祝日法が公布され、11月3日は「自由と平和を愛し、文化をすすめる」の趣旨によって祝日「文化の日」となりました。若い人たちはあまり興味ないかも知れませんが、実はこの日は明治天皇の誕生日にあたり、戦前は「明治節」と呼ばれていました。戦前まで天皇誕生日は「天長節」と呼ばれ、祝祭日とされていました。それが、戦後になって11月3日は「文化の日」として祝日のまま残されたのです。明治神宮では、「近代日本の礎を築いた明治天皇の遺徳を偲ぶ意味でも、11月3日の明治節の精神を永久に子々孫々へ伝えていきたいものです」とコメントしていますが、本来の「文化」とは何ら関係ありません。
◆ そんなことより家族でゆっくりビデオ鑑賞でもしながら、秋の夜長を過ごすほうが健全な気がします。芸術の秋だからといって、敢えて劇場に出かけて素晴らしい芸術に触れることを奨励するほうが俗物的な気がします。芸術感賞に比較してビデオ鑑賞は俗物的だと逆に酷評されるかも知れませんが、好きな時間に好きな映画を家族でtres
bien !(トレビアン!:すばらしい!)と言いながら気楽に観ることが、文化的とは呼ばないのでしょうか。くれぐれも「文化的」と呼ばれる言葉に惑わされないよう気をつけたいものです。こんなことを書いていたら夜も大分更けてきましたが、やはり秋の夜は長いものです。
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