フジツボ 
 vol.68
 2003/6/10

 一般的にフジツボのイメージは船の底に付着する漁師から厄介者として嫌われているようです。フジツボ類は船底に付着して、海水との抵抗のために船の速度を低下させる。そのため船はときどき船底に付着したフジツボ類などを取り除く必要がある。これと言った防除方法がないため、船の持ち主は時々船を陸に上げ、船底のフジツボ掃除をしなければなりません。また火力発電所や臨海コンビナート等の冷却水を取り込む送水管がフジツボ類などの付着生物に汚損される。その除去のためには莫大な経費がかかっています。
 写真のようにまるで富士山のような形をしたこの生きものがフジツボです。石灰質の硬い殻を持ち、先端には火山の噴火口のような穴が開いています。貝の仲間だと思われがちですが、実際はエビやカニの仲間に近い。赤ちゃんのころには浮遊生活をするものの、一生の大部分を固着生活で送っているのです。そしていったん固着した場所からは、二度と移動することはありません。岩場に固着する種類がほとんどですが、中には生きたクジラやウミガメにしか着かない変わり者もいるそうです。
 自由に動き回ることのできないフジツボ類は、実にユニークなえさの採り方をします。先端の噴火口のような部分から蔓脚(まんきゃく)と呼ばれるススキの穂のような脚を出し、これでひたすら水をかきます。こうして海中のプランクトンをかき集め、口の中へと運ぶのです。学問的にはフジツボ目・フジツボ亜目の総称。固着生活をし、かたい石灰板でおおわれているので、見ただけでは甲殻類とは思えません。熊手のような蔓脚を出し入れして、水中のプランクトンなどを食べます。適当な所で固着生活をするようになり、石や船底・うきなどにつくほかに、いろいろな海産動物にもつきます。雌雄同体なのです。

 このフジツボが珍味として高級割烹などでだされてるのを知っていました?青森の八戸ではフジツボなど何でもない食材だったのです。青森以外でも現在もあちこちで食材として利用されています。東京から近いところでは、伊豆半島で食べられていて、民宿の庭先に大きなフジツボの殻が転がっていたりする。ただそのほとんどは自家消費あるいは地元での消費で、東京まで市場流通してくるのは青森県産のミネフジツボくらいではないかと思います。
 ミネフジツボはとにかく大きくて、高価なのです。築地場内の仲卸の値段がキロ当たり3000円くらい。こぶし大の巨大フジツボですが、1個あたり300円以上になるのではないかと思います。塩茹でしてふたをはずして中身を食べると、カニのような、カキのようなどこか複雑な味がします。中のエキスはストローでそのまま飲みます。海の栄養そのものを凝縮した濃厚な味がたまりません。
 ミネフジツボ、東京では入荷量そのものが非常に少ないようで、魚屋の店頭に並ぶ機会はほとんどないと思います。並んでもキロ5000円とかになります。少し前に青森ではキロ3500円だったように思います。けれども食べようと思えば、みちのく郷土料理のお店や貝に強い割烹でメニューに載せているところがあります。そのすべてがすべてミネフジツボというわけではなくオオアカフジツボやクロフジツボかも知れませんが、いずれにしてもフジツボの味は楽しめます。