蝦 蛄 
 vol.67
 2003/6/2

 蝦蛄と書いて「シャコ」と読みます。北海道から沖縄まで日本全土に広く分布し、沿岸の砂泥質海域に多い。有明海ではクルマエビやシバエビなどの刺網に雑魚(ぐざ、外道)としてかかって嫌われることも多い。エビ・カニ類の仲間ですが、前脚(顎脚II)一対がカマキリのハサミのような形(捕脚と呼ばれる)をしているのが特徴。これで小魚やエビ、貝類等を瞬間的につかむのです。実は「シャコ科」の甲殻類なのですが、基本的にはエビとは別な生き物なのだそうです。シャコは北海道より南の浅海に棲息していて、砂や泥の海底に穴を掘り巣を作って生活しています。瀬戸内海や、有明海が主産地、また江戸前寿司のネタとしては、古くから東京湾の小柴のシャコが有名ですが、砂泥底の浅海にはどこにでもいるのです。英語の名前はカマキリエビ。するどく重装備の胸脚を使って貝の殻を砕き、カニの甲羅も裂いてその身を食べ尽くすといわれているほど。肉食の、鋭い攻撃力を持った甲殻類シャコは、網に掛かった魚も食べてしまうと言われ「海の掃除屋」という異名を持つのです。

 春から初夏にかけての水揚げが目立ちます。内湾の海底にたまった泥地や砂地に生息し、カレイを狙った刺し網などで混獲されますが、「足や手、殻が網にからみ、とても厄介なのです。そのまま網を切って外すこともある」とはある業者。塩茹でして、ハサミなどを使い両端を切落して殻をむいて食べます。「ビールのつまみ」に最高で、ビールの量もついつい増えてしまいます。メスの子持ちシャコは、これまた格別。味は「オス」「メス」とも甲乙つけがたい絶品。漁師に生で送ってとお願いしても、一般的には無理です。シャコは生きて動いているうちに鍋に入れて茹でないと身がやせてしまいます。宅急便で1日以上かけて送ってから茹でても美味しい状態にはなりません。最近では、茹でた「から付きしゃこ」を用意しているところも増えています。ちょっと割高ですがぎゅぎゅ〜っと美味しさが詰まっています。シャコは、東京湾や松島湾が有名ですが、瀬戸内海もシャコの主産地です。香川県では一年を通じて県下一円で漁獲され、周年美味ですが旬はお腹に卵のある春から初夏にかけてで、かたい卵巣(カツブシ)を賞味します。
 
 シャコはなんといっても茹でるに限ります。 生きたシャコを茹でる時は沸騰したお湯にシャコを入れ再沸騰してから8分くらいが目安になります。濃い紫色にゆだっていると、比較的楽にむけます。それも生きているものを茹でて、すぐにハサミで頭や脚のついている縁を切り、甲羅を開けてかじりつくのです。これを姿をみて気持ち悪いと毛嫌いする人は人生の楽しみのひとつをなくしている気がします。4〜5人で2キロくらいならあっという間に食べられます。カニよりもエビよりも、甲殻類で一番旨いのでは・・・。姿や形、茹でたときの色がカニのように真っ赤にならないからといって、関西ではあまり好まれないようですが、本当の旨さを知らないからだと思います。シャコは、時季はずれには極端に身が落ち、また、死んでしまうと、どんどん身痩せする生き物です。長時間の輸送ができません。また、生きてるうちに茹で、すぐに冷水に冷やして剥かないと殻がとれなくなる・・・というわけで、だいたい浜茹でされて出荷されます。手元に届くときは、すでに剥かれてしっぽの部分だけという状態です。

 ところで、このシャコ、剥かれた5〜6センチくらいの寿司ネタは知っていると思いますが、硬い殻に覆われて平たくつぶれたエビのような姿を見たことありますか?シャコの旬は5月〜6月頃。というのも、この頃に「カツブシ」とか「オカカ」と言われる独特の固さと甘みを持った美味な卵を抱き、身が肥るのです。故郷の宮城県沿岸部ではこの季節になると、飲み屋や民宿、また普通に各家庭で塩茹での姿そのままのシャコがドーンと出されます。赤い卵を持ったこの茹でたてを、ハサミでバリバリと周囲を落とし甲羅を剥いで食べます。これがカニよりエビより断然旨いのです! 次々ぱくぱくといけますから、この時期に訪れたらぜひ、ご賞味下さい。
 あくまでも茹でたものを大きな容器とハサミを準備し、テーブルの真ん中に置き、家族全員でかぶりつくのです。大人はそこに生ビールなんかがあったら、他の肴は何も入りません。茹でて殻をむいたものではなく、あくまでもそのまま茹でて、そのまま出すのが通です。
 三陸でこれの刺身を出す民宿や料理屋もあります。皮の剥き方は企業秘密だと話していましたが、軽く氷らせるとなんとか剥けます。食べてみてビックリするほどの旨さです。