スローライフ 
 vol.66
 2003/5/8

 このごろスローライフって言葉を耳にしますが何のことかご存知でしたか?数年前から“スロー”という言葉が急に注目され始めてきたように思います。もともとスローフードというのは、80年代にイタリアでオリーブオイルやチーズだとかの本当にベーシックな食べ物を食べている人たちが、みんな柔らかい物やファーストフードに席巻されているのはよくないことじゃないか、と始まった運動なんだそうです。詳しくは15年ほど前に北イタリアの「ジェノバ」と「トリノ」に挟まれた小さな村「ブラ(Bra)」から始まったスローフード運動は、N.P.O(非営利)活動として現在世界中に広まり、35カ国、7万人以上の会員で構成されている。『スローフード』は『ファーストフード』の対義語で、直訳すると「ゆっくり食べる」ことにもなるが、大きく3つの指針を掲げています。
 1.消えゆく恐れのある伝統的な食材や料理、質のよい食品、ワイン(酒)を守る。
 2.質のよい素材を提供する小生産者を守る。
 3.子供達を含め、消費者に味の教育を進める。
つまり、ゆっくり丁寧に作られた物をきちんと料理して、きちんと食べようというのがスローフードです。それと同じアイデアで延長線に何があるかというと、スロープロダクトだとか、スローライフだとかというキーワードをどんどん使って、やって来たという感じです。

 日本でも、郷土食や地方の特色のある野菜などの食材や日本酒を改めて見直そうという動きや、子供達に味覚の教育(食育)を行うという運動が各地で起こっています。金沢、名古屋、仙台、東京などが「スローフード宣言都市」を唱い、地域全体で取り組んでおり、今後ますます増えていくことは確実だと思います。物質的な豊かさを求めていた時代から、今や、「心」と「からだ」が健やかで「環境」を見直すことに価値があると思うようになってきた証なのでしょう。「食を正しくする」ことがポイントで、そのための食材の生産現場の見直し、食材、調理方法、食卓のあり方、生活のあり方まで考えるためのキーワードが『スローフード』なのだと思います。都市と農村それぞれに暮らすもの同士で夢を語り合い、競争・効率・グローバル化の嵐の中で、ちょっと歩みをとめて共生・ゆとり・伝統的な知恵を楽しく語りあい、いろいろな角度から考えて交流することも大切なことでしょう。

 ハンバーガーや牛どんを詰め込んでパソコン片手に飛び回り、子どもは塾通い、高齢社会は悪、グローバリゼーションに後れをとるな、そんな世の中の速さに疲れてきた気もします。いつも忙しがっている職場にはスローライフという生き方もあるのかと目を見張る思いがします。少し焦らずに日々を過ごしてみたいものです。私たちが、追いかけられ、急き立てられるような生活をするようになったのは、いつ頃からなのでしょう?都会ばかりでなく、農村でも、能率や効率が重視されるようになってしまい、こころ忙しい、せかせかした生活が営まれているように思われます。そうした背景を受けて、「スローライフ」が静かな人気をよんでいるのでしょう。効率主義を廃し、「心豊かな生活」「ゆとりある生活」「のんびり生活」「ゆったり生活」や「結果ではなく過程を楽しむ生活」と言い換えたらいいのかも知れません。「スローライフ」は、当たり前かもしれませんが今を大切にすることのように思います。

 終戦から高度成長期を経て、日本は「駆け足」で走り、豊かになりました。ですが今、いろいろな意味で岐路に立っているといえます。スピードや効率ばかりを重視するあわただしい毎日や働き方を見直そうという「スローライフ」が注目されているのも事実です。今までマイナス面と思いがちだった「スロー」に価値を見いだし、人生をゆったりと楽しみ、生活の質を高めようというものです。ここで立ち止まり、生活と食について見直してみることが、大切なのかもしれません。スローな暮らしというのは、何もしないでゴロゴロしているということではありません。いつも時間に追われて忙しくしていないと不安になるような生活。「やらなければならないこと」ばかりに囲まれて大切な゛何か゛を見失っている現代。少しだけ歩くスピードを「スローダウン」してみると日頃何気なくやり過ごしていたものが生き生きと見えてくるかも知れません。このゴールデンウィークこそは、「のんびり・ゆったりと、自分だけの休日を過ごす」「五感をとぎすます」「自分のペースで生活する」、そんな時間に使いたいものです。