市町合併への市民意識 
 vol.64
 2003/4/24

 21世紀を迎えた今、私たちを取り巻く社会環境は刻々と変化しています。その中で、生活に密着した行政サービスを住民に提供する基礎的自治体である市町村は、少子・高齢化、環境問題への対応、公共事業の新たな見直し、地方分権の推進など、新しい時代に対応していくための行政能力の強化・向上が求められています。こうした社会状況の流れと合わせ、全国的に市町村合併問題が話題になっているのには、市町村合併の特例に関する法律の存在があります。
 過去に合併した市町村の例によると、合併にいたるまでには準備期間に22ヶ月以上かかると言われているため、合併に係る財政的な優遇措置が盛り込まれた「合併特例法」の期限である平成17年3月までに合併するためには、いま考える必要があるとして、国が住民及び地方自治体に対して、自分たちの市町村のあり方を自主的・主体的に結論を出すよう求めていることも、全国的に市町村合併の議論を高めている理由の一つかと思います。

 4月20日の毎日新聞但馬版の記事。豊岡市の合併市民まちづくり会議が19日、市立中央会館講堂で初めて開かれ、新市の名称などをテーマに意見交換した。合併後の市の未来像について市民から幅広く聞き、北但合併協議会の議論に反映してもらうことが趣旨で市が企画。会議には市民約70人のほか、市長や市選出の合併協委員5人が参加した。市民からは「対等合併では難しいが、頭の中から出てくるのは豊岡以外ない」「豊岡市が住所の頭についたほうが、他町の人も位が一つ上がったような気分になれるはず」などと、「豊岡」を新市名称として求める声が続出した。
これらに対し、市長は「新市名に対する考え方は1市5町で一様ではないが、豊岡に九州されるのは嫌だ、という思いが強い人は多く、名称は象徴的な問題だ」と分析。さらに豊岡が支配を広げるという心配を他町に与えないよう、名称を決めていく必要があるなどと答えた。

 何と市民意識の低さに驚かされる言葉なのでしょうか。新市名に関しても豊岡市と名前を付けたほうが周辺の町としても格が上がったような気持ちがありいいのではないかとか、とてもまともに聞くにはあまりにも馬鹿馬鹿しい発言。まさに「井の中の蛙」状態です。

 合併を進める上で、重要となる4つの協議項目があります。合併の方式(新設合併か編入合併か)、合併の期日、新市町村の事務所の位置そして新市町村名の4項目です。合併協議が難航する場合、このどれかが原因となっていることがほとんどですが、最も紛糾が予想されるのが新市町村名の決定です。実際、歴史的経緯や現行名称への愛着などから、なかなか新市町村の名称について合併市町村間の調整がつかず、議論が先に進まなくなっている例が多く見られます。しかし、これも産みの苦しみ。将来に禍根を残さないよう、納得のいくまで議論したうえで新市町村名を決めてもらえたら。
 合併には、行財政の効率化や広域的な施設利用が可能になるなどさまざまな効果が期待されていますが、一方で中心部への一極集中に伴う過疎化が進み、地域への愛着・連帯感の希薄化や地域独自の伝統行事・活動の喪失が懸念されています。現に、過去の合併により生活圏の分断や失われた歴史・文化は数え切れません。今回の合併ではその喪失を加速させてはならず、各々の小共同体の個性や活動に配慮する必要があるだろうと思います。と同時に、広域化した新自治体を住民が我がまちととらえられる地域づくりも課題となるでしょう。そのための求心力となりえる自治体名の役割は大きいものがあります。ゆえに、一時的な話題性にとらわれない、真にふさわしい名を探し出す努力が求められるべきです。

 大分県の「中津江村」といえば、昨年のワールドカップでもっとも知られた村の一つです。ワールドカップでのブームに乗り、カメルーンとの交流をテーマに村づくりを展開して観光客の呼び込みに成功しました。昨年の流行語大賞を受賞するなど、まさに時代にのった村です。その村が今年1月、周辺5市町村と法定協議会を立ち上げ、合併に向けて動きだしたのです。ワールドカップの恩恵にあずかり知名度を上げたのもつかの間、中津江村はここにきて村名を失うことが決まり、その勢いにストップがかかろうとしています。村としては非常に残念なことです。

 ◎ 新設(対等)合併と編入(吸収)合併の相違点
区分 新設(対等)合併 編入(吸収)合併
合併市町村の名称 新たに制定する。

編入する市町村名になることが多いが、名称変更により新名称を制定することができる。

事務所の位置 新たに制定する。 通常は編入する市町村の事務所の位置となる。
議会議員 原則

・合併関係市町村の議員は失職する。

・合併市町村の議員定数に基づき、設置選挙を実施し、議員を選出する。

・編入する市町村の議員は在任。

・編入される市町村の議員は失職。

著しい人口増がある場合は、増員選挙を行なう。

特例

合併関係市町村の協議により、次のいずれかによることができる。

@【定数特例】

設置選挙において、法定数の2倍までとすることができる。

A【在任特例】

最長2年以内の間、在任できる。

合併関係市町村の協議により、次のいずれかによることができる。

@【定数特例】

編入される市町村の人口に応じて、増員選挙を行なう。

A【在任特例】

編入される市町村の議員が、在任できる。(在任期間は、編入する市町村の議員の残任期間)

・なお、合併時に定数特例又は在任特例を適用する場合には、その後最初に行なわれる一般選挙で、さらに定数特例を適用することができる。

農業委員会 原則

・合併関係市町村の委員は失職し、新たに選挙に及び選任により委員を選出する。

・編入する市町村の委員は在任。

・編入される市町村の委員は失職。

特例

合併関係市町村の選挙による委員は、10〜80人の範囲内で1年以内の間在任できる。

編入される市町村の選挙による委員は、40人までの範囲内で在任できる。(在任期間は、編入する市町村の委員の残任期間)

特別職 ・合併関係市町村の特別職は失職する。

・合併市町村の首長は選挙で新たに選出され、助役・収入役は新たに任命。

・編入する市町村の特別職は、身分に変動なし。

・編入される市町村の特別職は失職。

一般職の職員 引き続き合併市町村の職員として身分を保有する。
条例・規則

合併関係市町村の条例・規則は失効し、新たに制定する。

編入される市町村の条例・規則は失効し、編入する市町村の条例・規則を適用(ただし、必要な改正は行なう)

市町村建設

計画の作成

合併関係市町村の全域に係る計画を作成する。

少なくとも、編入される市町村の区域についての計画を作成する必要がある。