都会で働くサラリーマンの悲哀 
 vol.27  2001/7/1

 テレビを見ていると、都会で働くサラリーマンの悲哀を強く感じませんか。都会に限らないことだと思いますが、大手金融会社が一瞬にして消滅し、終身雇用制の神話も揺らいでいます。世の中がよどむと、人々の気分も落ち込んでしまいます。危機感や閉塞感ばかりが聞こえてきます。
 桜が散り、木々が深い緑に変わり、新社会人たちは今どのような生活を送っているのでしょうか。わずか3ヵ月余りですが、新しい仕事に意欲を燃やす人がいる一方で、「こんなはずではなかった」と次なる展開を考えている人も多いのでしょう。つまり、「飛躍型」と「現状不満型」のタイプに大別できます。働きたくない、働かなくてもいい人たちもいるかも知れませんが、一般的に生きていくために仕事を探して働かなくてはなりません。ということは、働くと言うことは、自分たちの一部でもあるわけなのです。

 第一生命の広報部が以前に出したサラリーマン川柳があります。職場生活や時の話題を詠んだ作品が多いようで、不況やサラリーマンの悲哀を感じさせるものばかり。政治も社会も変革の時代にふさわしい人材を求めているのかも知れません。かつての「寄らば大樹の陰」的な発想はすでに許されない時代です。会社人間として頑張ってきたサラリーマンには苦々しく思える川柳も多いことでしょう。
 イチローの 3日分だよ わが年収
 リストラで 公園デビュー また一人
 窓際で 居られたころが 華だった
 働けと 言う父親に 職がない
 わが人生 会社と妻の 気分次第
 ユンケルと リンゲル飲んで 腹くだし
 合理化を 進めていつか わが身なし
 同窓会 恩師と思えば 同級生
 コストダウン さけぶあんたが コスト高
 仕事しろ 残業するな 成果出せ
 この仕事 君しかないと 左遷され
 課長さん 家に帰れば 家長補佐
 ワイン通 言ってる本人 ビール腹
 定年や おしいおしいと 追い出され
 残業を 減らす会議は 残業で
 回らない すしを食べたら 目が回る
 アユと聞き 魚と答える 40代
 脱サラを 夢見るうちに はや定年
 出向で 上がる肩書き 減る給料
 窓際で 昔の手柄 聞かされる
 預金など ないのに嘆く 低金利
 我が一生 稼いだ金で 妻太り

 NHKの「プロジェクトX」が好評です。悲哀を感ずる中年サラリーマンに受けており、頑張ってきたこれまでの人生とダブらせているようです。中島みゆきの「地上の星」「ヘッドライト・テールライト」という挿入歌も息が長く売れていると聞きます。最近、流行っている歌に坂本九が歌っていた「明日があるさ」がヒットしています。CMやドラマの影響もあるでしょうが、確実に昔の歌がリバイバルされていく傾向のようです。時代を反映しているのか、20世紀が去り、新しい21世紀を迎えて、世の「おじさん」たちがようやく元気になれる前兆なのかも知れないと期待しています。
 人材派遣会社のパソナによると、定年後も第二の人生で頑張れる人は、「働くことに目的意識を持ち、異世代とコミュニケーションがとれ、過去を引きずらず、先頭にたって業務を遂行し、初歩的なパソコン業務ができる人」となっています。

 1970年代、アメリカがベトナムで敗北してから、体制が力強さを失ったとき、それと同時に対抗文化も力を失ってしまった気がします。解放運動も四分五裂し、ウーマン・リブも衰退し、コミューンもほとんど消滅してしまいました。つまり、正統な文化が強力な時にはサブ・カルチャーも力を得ますが、正統派が力を失うと同時にその反対派も無力になったように見えるのです。歌も同じです。これらの歌をじっくり聴いてみると、現代が抱えている苦悩が、ひしひしと伝わってきます。いまや、大声を上げて何かに向かって叫ぶ時代ではありません。自分の内側を点検し、その内省の中から新しいものを生み出さなければならないと思います。声を大にして叫ぶのではなく、つぶやくように自分に問い掛けていく。自分にとっての幸せとは何だろう、自分の身のたけに応じたささやかな幸せを追求することになるのです。それだけに、昔より腰が強い、粘りがあります。リバイバルしているこれらの歌が若者世代に受け入れられていることは、この内省の姿勢が人々の共感を呼ぶからでしょう。そして、緑の山あいを吹き抜ける風が、都会のサラリーマンにも元気を連れて来てくれるものと思います。