注文の多い田舎酒房「山猫軒」-3 
 vol.22  2000/11/15

 「山猫軒」開店までの経過を簡単に紹介します。家族に迷惑をかけない大人の遊び場がほしいと勝手に計画しつつも、なかなか実現までには至りませんでした。そんなときに引越しから一度もマイカーを入れたことのないガレージが空いているのを思いだし、物置になっていたガレージ内を居酒屋風の空間に変えたいと取りかかりました。特別な手をかけてああだこうだと改造する気もありませんでしたが、それでも最低は看板とテーブルくらいは自前で揃えるべきだと妙にこだわってしまいました。看板はケヤキの一枚板で約20キロ以上もある代物。大人の遊びといってもやはり酒を飲むのであれば、洒落た名前の一つでも付けたいと思うのが真の「大人の遊び」なのです。山猫軒のシャッターを開けると、前方には標高400m程の、コブを幾つか並べたような東里ケ岳が見えています。宮沢賢治の作品に出てくる「七つ森」という雰囲気に似ているのではないかと勝手に思っています。そこで、宮沢賢治の有名な作品「注文の多い料理店」から山猫軒の名前を借りることにしました。

 店名が決まったら、今度は本格的な看板作りです。ケヤキは思った以上に硬くてうまく彫れません。仕事が終わった後に毎日ノミを持って挑戦していましたが、ノミと彫刻刀を何本もダメにしてしまいました。楽しみながらやっているとはいえ、なかなか思うように彫れないジレンマに苛立つこと3ヶ月あまり。ようやく彫り終わった看板を前にして、何か物足りなさを感じてしまうのです。表面にサンドペーパーをかけながら、思いきって「津軽塗り風」にしてしまえと思い、漆ペイントを購入して早速チャレンジ!でも所詮は素人の浅はかな思い付きだけで、できあがった作品は津軽塗りにはどうみても見えないものになってしまいました。苦し紛れに「鎌倉彫り風」などと嘯いています。

 表の顔が出来上がった次は、店内の顔作りです。何といっても10人は座れる大型テーブルに挑んで見ることにしました。材料は山猫軒から車で5分ほどにある山林に登って伐採してきた高さ10mほどのヒノキ4本です。近所の製材所の方に同行してもらいましたが、材木のきり出し作業がこんなに重労働だとは知りませんでした。伐採したヒノキをふもとに下すだけでヒイヒイの連続。すぐに製材所で板材に挽いてもらい、約一月半かけて自然乾燥させました。何とか無事に3mほどの長机を作り上げたのですが、足元が少々ガタツクのが難点といえぱ難点。それでも手作りを信条としていることから、こんなものかと勝手に納得。その後、博物館と取引をしている会社にお願いして特注テーブルの製作を2基お願いしました。天板は杉の80年もの、脚は日高町神鍋産のブナ。女房に文句を言われながらも大人の遊びを信条にしている者としては、小遣い範囲での遊びは今回は無理なので、女房にお願いして何とか素直に決着。でも、少しでも楽しめる田舎スポットが一つでも増えればと願って運営しています。

 こんな調子で山猫軒は開店しました。当初は2000年4月末の開店を予定していましたが、何かと所用や雑用が多くなってしまい、結局は7月初旬にオープンしました。山猫軒の定員は12名程ですが、ビールケースなどを逆さまにして椅子として使っていただければ何人でも結構です。気軽に集まれるオープンスペースとして「山猫軒」を作りましたので、老若男女どなたでも気軽に立ち寄ってください。けしてお洒落なスポットではありませんが、地域コミュニティの小さな小さなスポットになればと念じています。オープン後、4回ほど開店しましたが思っていた以上に好評でした。 
▲ 手作りの漆塗り看板 ▲ 杉・ブナの特注テーブル ▲ 手作りオリジナルグラス