森と水 生命の物語in川上 
 vol.90  2002/6/2

 5月24日から26日まで、奈良県吉野郡川上村へ出かけてきました。桜で有名な吉野の隣村で、大滝ダムという大型ダムが建設されている村、または年間降水量4000ミリ近い記録を持つ大台ケ原のある村といった方が分かりやすいでしょうか。吉野川や紀ノ川の源流があることから「源流シンポジウム」が開催され、全国から源流に関心を寄せている人たちが集まりました。昨年に続き2回目の訪問になりましたが、居心地のよさは前回同様です。山深い村でありながら、阪神間にも近く、中途半端な町よりも意識はかなり高いように思えました。初日は芸術家が生活している「匠の聚」の一角にあるログハウスに泊まり、シンポジウムのパネラーたちと夜遅くまで話しておりました。各地で頑張っているだけあって、あくの強い個性的な人たちが多く、川上村を支えている原動力にも感じました。前回も感じたことですが、今回は川に関する集団が集まっているのに、私だけは何も関係がないように思えるのですが・・・。せっかく声をかけていただいたので、今回も川上村のファンとして参加させてもらいました。

 「匠の聚」は芸術家たちの生活と創造の場として建設されたもので、現在8人の芸術家によって多彩な活動が展開されています。1人を除いてIターンとして転入してきた人ばかりで、自治体とは別の形での情報発信を続けているようです。一般の人たちも宿泊しながら創作活動できる宿泊棟、工房、研修室、ギャラリーが完備しています。立地や雰囲気は富山県利賀村の「瞑想の郷」に似ていますが、都市圏からのアクセスを考えた場合、比較的便利な場所です。いずれにせよ、芸術家自らが川上村を発信している姿は、自治体との相乗効果が最もうまく出せているように感じました。

 源流シンポジウムは全国から約70人(?})が集まり、全国源流ネットワークの設立を前提としたシンポジウムが開催されました。本町も源流のある町ですが、全国的な意識の中ではけして高いものでないことを確認できました。21世紀は水と環境の時代であり、全国各地の源流に存在する水や森は人間生活に必要不可欠なものであり、源流域の豊かな自然・歴史・文化資源に新しい価値を見出す時代だとも提唱しています。ネットワークの事務局を川上村に設置したいと当局側は考えていたようですが、結果的に山梨県小菅村の多摩川源流研究所に決まってしまいました。川上村は僅か2800人の小さな村ですが、市町村合併もせず自力で頑張っていく決意をしている姿への共感を覚えるファンも意外に多かったように感じられます。明確な意思を持ち、一人一人の職員が村を支える一員だと言う意識と覚悟は、交流者に熱く語るのではなく、静かに淡々と語る様子は村を誇りに感じている職員の姿でもあったように思います。その姿を真摯に学びたいと思います。全国から川上村に集まった人たちとのネットワークもでき、博物館運営を思考する上でNPOとの関係や今回のシンポジウムの在り方は大いに参考になりました。

 水の源流館は国内で最も新しく設置された博物館であり、最新博物館の実態を知る参考施設でした。施設は4月29日にオープンしたばかりで、約10億円の建設費、運営主体は「財団法人吉野川・紀ノ川源流物語」で年間運営予算8千万円、スタッフ7人と恵まれた環境の中で運営されています。建設費の半分(?)は展示費に費やされただけあって、映像部門が充実していました。その反面、展示資料そのものが極端に少なく、やや不満が残ります。オープン1ヶ月を経過していない状態で、ハイテク展示は早くも故障や什器に損壊がみられ、使用禁止状態がありました。国内最大級のパノラマシアターは、迫力は充分にありますが、同様なソフトを今後制作することは予算面で困難かも知れません。説明パネルにしても、全て作り付けであり、自分たちでパネルを替えることさえできません。厳しい言い方をすれば、全体的なコンセプトがないまま、展示業者に先導されてオープンした感が歪めません。地理的には阪神間から約1時間半の距離で、本町と比較する上で参考になりました。年間入館者25000人目標。気になる点として、展示業者の関係だろうと思われますが、滋賀県立琵琶湖博物館の展示とほぼ同一であり、ここでしかという特異性がまったく見られず、新設館という印象が感じられないのです。
 しかし、ここの特徴として施設だけで完結するものとは違い、水源地の森を含めた村内全域をエコミュージアムとして位置付けて考えており、今後の運営次第では施設そのものも活かされていくだろうとは思いますが・・・。そういう意味では職員による意識付けが最も大切になってくるでしょうし、それ相応の専門性が求められてくるのは仕方ないことです。まだまだ素人集団といった雰囲気を呈していますが、前向きな意欲だけは感じられます。坂口館長はじめ職員皆さんの活躍を期待しています。

 川上村とのお付き合いは、大阪でたまたま役場の栗山課長とお会いしたことが縁でした。その後も視察に来てくれたり、いろいろな面でお世話になっていました。栗山課長が頑張っている川上村とはいったいどんな村なのか、一度は行きたいと念じていました。混迷している地方自治の中で、フレシキブルな発想とフットワークの良さは行政マンとして是非とも見習いたいものです。帰りには川上村の名水「 楠里水(くすり)の水」をいただきました。別名「奥吉野の名水」または「弘法大師ゆかりの湧水」として知られ、常温でもまろやかで美味しい水でした。夜のうちにわざわざ汲みに出かけられ、ホテルに届けられていました。有難うございます。