平成12年度ミュージアム・マネージメント 
 vol.58  2001/3/1

 国立科学博物館で今年度のミュージアム・マネージメント研修が開催されました。全国から75人にも及ぶ博物館の館長や管理者・担当者が集まり、朝から夕方まで缶詰状態での研修が行われました。各地の博物館でも著名な方たちも多く参加しており、このメンバーが日本の博物館を牛耳っているメンバーなのかと一人で感心しきりでした。上野の森にある国立科学博物館周辺は博物館や美術館も多くみられ、昼休みには昼食もとらずに毎日1館ずつ博物館を見て回りました。国立東京博物館では「土器の造形」展、都立美術館では「鑑真和上展」等が開催されており、普段見られない質の高い展示に疲れも吹っ飛んでしまいました。

 上野はかつて東北の玄関口と呼ばれており、東北人にとっては何となく落ち着く場所です。上野の森には青いビニールシートを掛けたダンボールハウスが以前に比べてかなり増えたように感じます。混迷している政局と不況を反映してなのか、人生の悲哀さえ感じてきます。これまでの高度経済成長を支えた挙句の果てが「上野の森」では、あまりにも悲しすぎます。文化施設と呼ばれる施設も、高度経済成長とともに増え続けてきましが、ここに来ていよいよ淘汰される施設も出てきたように思います。利用者側に立った施設運営がどれだけされているのか、見せる側から今度は見る側の視点に立って考えていくのは当たり前の話です。当たり前のことが、当たり前として通用しない時代だからおかしいのです。

 当館は今年で開館5年を迎えます。開館当初は先輩格の博物館の敷居が高く、なかなか足を運べずにいました。同業者として新しく参画するとはいえ、この世界は格式を重んじる世界なのか(まるで歌舞伎の世界である)、と感じる毎日でした。新参者には厳しく冷ややかな視線を浴びせ、古参格、または巨大な博物館には上目遣いの視線が肌で感じることも多々ありました。果たして博物館とは誰のための施設なのか?そんな疑問が最近になって特に強く感じ始めています。こんな現状からの突破口として、地方から博物館のイメージ破壊を目論んできました。日本の博物館にもそろそろ新しい風が吹き込む予感さえ感じるこの頃です。バブルの崩壊から遅れること10年。県の博物館協会学芸担当者会議に出ても、マネージメントの必要性を話すと、やや違和感を覚える空気が伝わってきます。日本の博物館に欠けていたマネージメントの必要性もようやく認知されつつあり、平成7年には日本ミュージアム・マネージメント学会が設立されています。今後、潰れる博物館や美術館も出てくるでしょうが、現状のまま変化しないままでは仕方のないことだと思います。その辺の危機感を敏感に感じる人たちも多く、博物館から大学の教員に転出される方が最近は確実に増えている感があります。

 すでに21世紀を迎えていますが、当館も21世紀型の博物館を目指して精進していく覚悟です。ミュージアム・マネージメントには全国から75名が参加し、館長・副館長・学芸課長・学芸員・嘱託の人たちで、館種や置かれている立場も違う人たちばかりで、博物館の現況を知るには格好の機会です。ただチョット気になる点として、普通の研修であれば5日間も席を同じくしているのだから、もっと和気藹々といった雰囲気があるはずなのに、どうしてなのかそのような状況があまり見られません。二日目に東大の学士会館で短い時間でしたが、情報交換会がありました。あまり短い時間だったために横の連絡を取る間もなく終了。せっかく全国から集まっている博物館関係者なので、この機会を利用して具体的に連携できる時間があってもよかったかのではないかとの個人的な感想。もしかすると本当に敷居の高い人たちばかりだったのではないかと感ずるのは私だけなのでしょうか。

 よい劇場はよい俳優を育てるという諺があります。優れた学芸員は博物館を選ぶとも・・・・・。博物館は主役である利用者という俳優たちが演じる過去・現在・未来という題のドラマのための劇場です。