◆ 美術の秋、芸術の秋です。毎年恒例の地域限定の公募展「○○市美術展」が始まりました。伸びゆく地域の芸術文化の創造に資するため、地域の美術愛好者を対象に毎年開催されてきた伝統ある美術展です。子どもから大人まで造形的にも優れた出品が多いので、機会を見つけてぜひ足を運んでほしいものです。
しかし、この美術展の裏側ってどんな感じで準備を進められているのか、一般市民はあまり知りません。この市美術展の裏方の中には美術に関するプロは一人もおりません。美術教師がいたとしても学校現場では教えるプロでしょうが、残念ながらその道のプロではありません。
◆ 作品が多くなると、審査する側も疲れてきます。時として感覚が麻痺してしまい、自分たちの大切な子どもたちが出品してくれたことをつい忘れてしまうことがあります。最後は惰性で審査している状況です。この姿を見ている市職員も同様で、大事な時間を使いながら子どもたちが製作したことを忘れてしまっているのです。既に作品ではなく、目の前に置かれた「モノ」に過ぎません。本来、作品は多くの子どもたちが苦労しながら描き上げたものであり、そこには家族や友人たちとの会話が聞こえてくる、そんな風景まで見えてくるものです。にも関わらず、裏側で準備している職員には子どもたちの楽しげな会話が一切聞こえて来ない。聞こえないのではなく、作品に耳を傾けて聞こうとしないだけです。どんな美術展にしろ、作品に対する扱い方、出品者に対する思い、準備スタッフの心構え、何ら変わりはないはずです。変わるものがあるとすれば、それは当事者の気持ちを忘れた「馴れ合い」「無知さ」「無神経さ」です。
◆ 市内には博物館や美術館が比較的多く設立されています。にも関わらずミュージアムスタッフがこの美術展に関わることはほとんどなく、旧態依然として素人の市職員が公募展を支えています。作品の取り扱い、作品の見方、作品に対する思いも全く雲泥の差です。会場の間仕切りや作品の並べ替えができた程度ではなんとも心細い限りです。
舞台裏の仕事を要約すれば、さまざまな作品を出品者の意図通りに具体化することですが、内容は一言で片付けられません。相談相手は裏方スタッフのほか、美術教師、地元芸術家等々。それぞれの意見を聞き、段取り良く進める先見性が求められます。裏方について、関心を持つ方は少ないかもしれませんが、すごく大事なことです。
その根本にあるのが、やはり美術展を支える理念ではないかと思います。では、そのためには一体、何が必要なのか。それはやはり、美術展としての地に足の付いた、しっかりとした理念と存在意義だろうと思います。ともかく「文化には人を動かす力がある」というより、「文化」を支え、育てるのは人です。「文化の求心力は面白がる心」だと河合文化庁長官はいっています。
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