二極化する博物館・美術館 
 vol.152  2005/11/3

 最近、博物館や美術館を取り巻く環境が大きく変化してきました。運営の厳しさはどこも変わらないのですが、ここに来て国や県レベルの大規模施設において、人集めとして大規模企画展が開催されています。これは展示の中身もそうですが、予算を見ればまさに異常な数字です。ある大型施設の副館長は、広告費を含んだ予算規模の大きさ、一日の入館者数1万人以上というような数の論理で自慢してきます。この大型施設はいったい誰のための施設なのだろうかと疑問を感じてしまうのですが、関係者にとっては関係ないことだと嘯いています。こうした数の論理に押され、自前の資料もない貸し館状態が増える中、関係者は博物館・美術館が持つ本来の使命を見失っていることに気が付いていません。まさに一部バブル状態であり、いずれこの大きなツケは私たちに大きくのしかかって来ます。博物館や美術館ばかりではなく、日本の社会そのものが「勝ち組」「負け組」などと既に二極化しているといわれています。

 全国にある博物館や美術館の大半は小規模施設です。乏しい予算の中で学芸員たちは博物館や美術館が持っている本当の面白さや楽しさを伝えようと意欲的に取り組み、質の高い企画展を開催してきました。地道な調査や研究の成果を市民にいち早く還元し、地域に根を張った活動を実施しているところが多いあります。しかし現実は規模の小さな施設では到底大規模施設に対して太刀打ちできない大きな壁があることも事実です。交通アクセスにも恵まれず、季節によってはほとんど入館者も来ないときもあり、有名な資料も借りられず、大型動員なんか夢のまた夢といったところさえあります。日本の社会は実態のないIT長者と呼ばれるような富裕層を生み、真面目に働いても日々の暮らしも大変な貧困層の二極化がどんどん進み、かつての総中流意識を持つ国民はほとんどいません。全国の博物館や美術館も日本社会と同様に、新聞社などマスコミと共催した大規模展が開催できる貸し館状態の施設と、地道で良心的な活動をしているわりには入館者が増えない施設に分けられます。地方の博物館は20年前に冬の時代を迎え、10年前にはさらに氷河期となり、現在は風前の灯状態だといわれています。疲弊しきった地方の博物館や美術館は体力的に後10年持つのだろうか危惧されます。博物館の本当の楽しさを伝えようとしている学芸員の夢はしぼむばかりです。