曲田の正教会 
 vol.147  2005/10/18

ハリストス正教会の話が出たついでに、秋田県大館市にある教会を紹介したいと思います。東京神田にあるニコライ堂のような立派な建物でなくても、東北地方の寒村にも立派な正教会があることを後日知り、早速出かけてきました。正式には北鹿ハリストス正教会曲田福音聖堂というのですが、一般的に曲田教会のほうが通っていた名前でした。場所は秋田県大館市のはずれ、田園に囲まれひっそりと建ち尽す曲田の聖堂は明治時代の擬洋風建築として文化的価値が認められ、昭和41年秋田県から「現存する我が国最古の木造ビザンチン様式教会堂建築」として県文化財の指定を受けています。
 この聖堂は、約15坪の平面十字形の恐ろしいほど小さな木造平屋建てです。工期はわずか3カ月で明治25年7月31日に竣工し、大工棟梁は貫堂と言う東京神田のニコライ堂の工事関係者でした。秋田杉をたくみに加工し、聖所の架構法も四方から木製アーチをのばしてドームをかけるなど、貴重な木造ビザンチン様式建造物です。明治時代擬洋風建築として文化史的価値があるのは当然ですが、このような東北地方の農村にまで分布したハリストス正教会の聖堂遺構として地方的意義のあるもので、感動に近いものを覚えました。聖堂内にあるイコン19点は近代日本の黎明期における洋画法を用いた例として美術史上の価値も大きく、平成3年9月市文化財に指定されました。大館市に出かける機会がありましたら、是非とも立ち寄っていただき、地方における正教会の歴史などを聞かせてもらえば明らかに違う側面の地方史が垣間見えてくるはずです。ニコライ堂にも函館ハリストス教会にも負けず劣らない素晴らしい教会建築がこの曲田の地にあることを知ってほしいものです。

 続けて教会の話を書いていると怪しい宗教関係者とか、変な宗教にかぶれている輩ではないかと勘違いされますが、どちらかといえば無宗教論者に近い立場で、妻いわく「罰当たり」な人間ですからと・・・。それでも人間は創造的な生き物ですから、生まれて死ぬまで、常に何かを考え、何かを生みだし続けて生きています。人は常に何かに興味を覚えたり、何らかの目標を持ったりするものです。そして、その興味を満足するための追求や目標に向かって努力を惜しみませんし、人間の興味は尽きることがありません。この創造力を生みだすエネルギ−は一体何処から生まれてくるのでしょうか。洋風建築からハリストス教会建築、東方教会史、イコン等、バラバラに見えますがひとつの興味からどんどん広がっていくものです。新しいものに触れたり出会ったり、何かに感動したり、違う角度から見つめ直してみたりというきっかけが、新たな意欲や新たな創造に結びつくものだと思います。しかし、そこにはそれを支えてくれる家族の愛情や信頼は最低必要条件であることは言うまでもなく、真の安らぎではないでしょうか。普段は煩悩ばかりで罰当たりな人間ですが、ふとロシアイコンを観察しながら思うのは、気が付けば人生も折り返し点を迎え、神妙な思いで妻や家族に感謝する秋の夜を過ごしています。