| ◆ 学生時代の卒論テーマに「ハリストス教会建築」を取り上げ、北海道から東京までの正教会建築を見て歩きました。きっかけは建築史のゼミに入り、それまで中世城郭の発掘を何年か続けていましたが思うように資料が集まらず卒論が書けませんでした。当時は洋風建築の悉皆調査が主流だったこともあり、ゼミ仲間も洋風建築で書くものが多かった気がします。
函館にある旧ロシア領事館を宿舎としたゼミ合宿が始まりました。異国情緒の街「函館」を象徴するのは何といっても、元町という函館山の裾野に広がるあたりです。山麓から函館港を見下ろすように並ぶ16のきつい坂道。その周辺にはさまざまな教会が立ち並び、歴史を物語る西洋風建築の民家や倉庫が数多く残っています。このとき出合った洋風建築に魅了され、故郷である宮城県石巻市には現存する日本最古のハリストス正教会があることを知ったのです。この函館ハリストス正教会は日本で最も古い歴史を持つ正教会ですが、初代の復活聖堂は1860年(安政6)に建立されましたが1907年(明治40)に焼失し、1916年(大正5)に現復活聖堂が竣工しています。1983年、大正時代の建造物としては全国で二番目に国の重要文化財に指定。
◆ ここで、ハリストス教会だ、正教会、東方正教会だとか、様々な名称が出ますが、基本的にはキリスト教のひとつである東方正教会のことです。キリスト教世界は大きく分けて三つの会派に分かれています。東方正教会、西方教会(ローマ・カトリック)、プロテスタント教会の三つです。8世紀から11世紀にかけて、西方教会との違いを深め、11世紀に東西に分裂しました。また東方正教会と西方教会は「旧教」、プロテスタント教会は「新教」と二つに分類することもあります。文化的には西方教会はラテン文化圏であり、東方正教会はギリシャ文化圏で育まれた教会ともいえる。日本ではロシアから教えが入ったため、ロシア正教と呼ぶことも多いようです。日本のキリスト教会の中では、日本ハリストス正教会が東方正教会に属します。
◆ 前段が長くなりましたが、故郷の石巻市千石町にある石巻ハリスト正教会会堂が1880年(明治13)に建てられ、宮城県沖地震で倒壊してしまい再建中でした。現存している日本最古のハリストス教会だったと聞いていただけに残念でした。再建は北上川の河口近くにある仲瀬公園中央に建設されておりましたが、再建・修復というより基礎から屋根瓦まで新築そのものでした。もっと使える部材があったにもかかわらず、建築コストの関係なのか文化財という認識が低いことに憤りを感じながら見学したものです。
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