◆ 8月に実施した仏像調査の一環として紹介します。本来は「但東の文化財」として紹介したらいいのでしょうが、博物館の仕事でもある文化財調査例として取り上げてみました。地区からの要望で仏像への保存対策を検討するための細部写真撮影、虫菌被害状況、火災・防犯に対する保存施設等の確認を実施しました。
本例は平安時代前期〜中期を代表する兵庫県指定文化財です。像高153.5センチの一木造り。西谷地区の観音堂に保管されており、地域で大切に管理保存されています。近くには清龍の滝や式内社の手谷神社もあり、古代の空気が伝わってくるような雰囲気があります。
彩色、彫眼の像で、体部は内刳りのない一木造りです。頭上には11の化仏を表し、左手に水瓶をとる通例の十一面観音です。脚部には翻波式衣文や渦文を彫り出し、森厳な表情を示すなど平安時代前期の様子が見られますが、像立年代は作風から中期まで下がると考えられます。大きくうねる条帛や腰部の裳の折り返し部や膝下あたりでたくられて左右へ広がる裳裾、面部の厚みが左右で異なるなど、注目すべき点も多く見受けられます。右手首より先、右足先、両手から垂れる天衣、持物、光背、台座は後補。彩色もやはり後補で、尊容を損じているのが惜しますが、これは近代に補修された際、安い金箔を使用したためです。
◆ 大きな衣を身に付けた場合、普通は乱れたヒダが生じてしまいます。それを非常に美しく整えて表現することで、それを着ている仏の静寂さ、深みといったものを表すというのが、本来の仏像の表現です。ところが、それとはまったく逆の方向の衣文表現をもつ仏像がたくさんあります。通常では起こり得ぬような不可思議な衣の動き、衣のヒダには見えぬような強烈な刻線、布の表現には似合わぬほど厚く重い感じの衣の表現など、いずれも仏の静寂の境地を表しているというよりは、何か霊的な雰囲気がそこに吹きすさんでいるような不可思議な力を感じさせるのです。本例は左胸で結び、垂れて絡む条帛の大胆で遊びのある表現で、胸飾りも身体から共木で彫り出されています。
このような仏像における霊威表現が、いったい何によって生まれてきたのかを考えるとき、慈悲に満ちた仏の世界への憧れという一般的な仏教観とは異なり、古代人の神霊的な精神世界が見えてくるように思えるのです。そこには日本的な仏像の源もあるのではないかと勝手に考えています。平成13年・14年で町内にある仏像の悉皆調査を実施していますが、平安時代の仏像が意外にも多いので驚いています。報告書はまだまだ先になります。 |