変わる大学 
 vol.102  2002/10/5

 18歳人口の減少にもかかわらず、文部科学省は公立・私立の新規大学や学部学科の新増設を認可してきました。国立大学の再改編が進んでおり、地方の国立大学が切り捨てられる状況にあります。これまでにも地域における大学の役割として重要な使命があったはずで、地域社会の持続的発展に寄与してきたはずです。日本には国公私立合わせて670の4年制大学があります。国立大学は独立行政法人化を迫られ、大学経営の効率化導入によって、これまでのあり方が変わっていきます。私立大学も少子化の大波のもとで存在意義が問われています。 国民の多くは国立大学の独立行政法人化についてほとんど関心がないのが現状です。自分たちの子どもの大学入試には最大の関心を寄せますが、その大学でどんな研究がなされているかなど一切興味がありません。何故、関心や興味がないかといえば、大学で日々営まれている学問は国民の生活の実情から遠く離れた存在感があり、象牙の塔としてきたことのツケが回ってきたことです。

 大学の授業といえば大講義室で大半が居眠りという情景が浮かびます。大人数の講義では、後ろの席ではなかなか聞き取れず、授業に参加している気がしないものです。最近では居眠りしてしまう授業をする教員にも責任があるのではないかと反省の声が聞かれます。小中高校では教育実習があるのに、大学ではそんな機会もないまま教壇に立つ人が多いとも指摘されています。研究業績でいかに優れたものがあっても、教育者として優れた人材とは限りません。これまで大学教員の採用や昇任は研究業績が最重視され、大学教員という意識よりも研究者でありたいと願ってきたところにも問題があります。授業改善に対しては、授業のマニュアル化、教員管理につながるとして懸念される要因もあります。最近では公開実験授業なるものも現れ、誰でも受講できる機会が増えています。確かに名物教師と呼ばれるような人たちもおり、話題も豊富であり、90分の授業がこんなに短いものかと感じたこともありますが、正直、マンネリ化したまま退屈な講義も結構多いものです。

 最近の話題として、大学を舞台にしたアカデミック・ハラスメント、通称アカハラが問題になっています。教授らが自らの地位を利用して、部下の研究者に陰湿ないじめや研究妨害を繰り返すことが続いているといわれています。人事権をちらつかせて教え子をいじめたり、論文を自分が書いたかのように装うことが日常的に起きていると指摘されています。教授会は教授同士のなれあいの場であることが多く、自浄能力は期待できないともいわれます。閉鎖的な社会だからこそ起きることで、普通の社会ではあまり考えられないことなのかも知れません。

 地方の短大では悲劇的な状況が伝えられています。大学淘汰の時代が到来し、地方の短大では閉校を余儀なくされた短大も出てきています。自治体も財政難から援助する余力もなく、文化振興に位置づけてきたあり方も問われ始めています。生き残りをかけて学科の改編や男女共学化、入学金などの免除なども始まっています。短大を出ても就職に有利なこともなく、すでに飽和状態になっており、定員割れも起きているほどです。よほどの特色がない限り生き残りは難しいと思います。大学撤退後のまちづくりが検討される世の中です。山形県内のS短大では中国からの留学生を積極的に受け入れ、あげく留学生の大半が山形から東京に移り長期アルバイトをしていた事案もあり大きな問題となっています。

 すっかり教員の権威や権力が薄れてしまい、携帯電話のメール私語が教室内で氾濫しています。教室は以前より静かになっているようですが、他人に迷惑を掛けなければ何をやってもいいのか。授業を聞くか聞かないかは自分の勝手が台頭しています。それでも、新しい授業のやり方を提案している教員も出てきています。教員だけではなく、事務職員を対象とした能力給制度を導入している私立大学もあります。どちらかといえば事務職員は業績を数値化しにくいと思うのですが、これも大学冬の時代を前にした経営判断です。従来の勤続年数や年齢に応じた給与体系、ベースアップは廃止。このため、新人とベテランの収入が逆転する場合もあります。少子化を前に、大学を活性化するためには企業マインドも必要でしょうが・・・。これからは事務職員だけではなく、教員側にも年俸制や能力給制度が導入されていくかも知れません。

 少子化の中で、大学は大きな転換期を迎えていることは事実です。生き残り策として、産官学の地域密着型、研究中心型など、それぞれ特色あることが望まれています。
 余談になりますが、社会人としての経験を考慮し、面接や小論文などの試験で入学できる社会人入試が人気を集めているようです。社会人入学は明確な目的意識を持った人が多く、一般学生の意識向上にも役立っています。家事・子育て・学生という一人三役の忙しい毎日を送っている主婦が、これまでとは違う世界が広がったと歓迎しています。社会人入学の学生は極めてまじめな人が多く、講義は最前列に座り積極的に質問します。教員側も厳しく判断されるので、教えがいがあり手抜きができません。いずれも刺激し合う関係ができ、歓迎されているようです。