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◆ 小泉内閣の掲げる聖域なき構造改革の柱として、国家公務員制度の改革があります。従来のポスト至上主義から、能力重視に大転換するもので、公務員を職務遂行能力に応じて1級から6級に格付けし、昇任や給与の基準となるものです。階級は課題解決力、組織形成力、職務知識、意欲と姿勢、などが加味されています。その背景として民間企業で厳しいリストラが続く中、公務員は民間に比較して緊張感が足りず、特に不況の時にはよく目立つという問題があります。
利潤追求を目的とした企業と、公共利益のため国民に奉仕する公務員とを同次元で論じることはできないかも知れません。公務員は営利目的の企業とは異なり、仕事の成果を利益や売り上げといった形で数値化することができないという大きな問題があります。でも、企業と公務員とでは、意外に共通している点も多いことも事実です。公務員が成果主義の強化により目先の仕事で成果をあげることばかり考えるようになるのは、公共サービス向上にとって好ましいことではありませんし、評価を気にし過ぎるあまり、行政の事なかれ主義や隠蔽体質が強まるという懸念もあります。
◆ 最近発生した地方公務員の不祥事を見ただけでも、どのような状況であるかが推察されます。青森県住宅供給公社の経理担当者による14億円横領事件、チリ人妻へ送金していたというものです。高知県土佐山村の前収入役による15億円以上の公金横領事件などは、村の金庫番として経理を仕切り、それを10年以上もチェックできなかったという監査体制の甘さが露見してしまったものです。村では実直な金庫番、私生活は資産家気取りとは呆れた行状です。広島県埋蔵文化財センターの前総務係長による架空契約で代金300万円詐欺事件。愛知県松前町の元税務課係長が徴収した税金200万円の公金着服事件。京都府久美浜町の学校教育課長は、12万円分の領収書を紛失し使途不明金処理されることになり、総務課主査に降格人事。兵庫県芦屋市の前助役は旧建設省キャリア官僚から出向していましたが、収賄事件で逮捕。兵庫県篠山市では市ディサービスセンター職員の公金横領、遺族会会計担当者の帳簿付け忘れや支払い遅延怠慢行為、市営住宅の工事不備にもかかわらず契約額の支払い等々、合併当初の緊張感も失せた不祥事が相次いでいます。兵庫県温泉町では町広報紙「広報おんせん」が担当職員の業務の遅れで発行できずに厳重注意処分。
◆ 兵庫県豊岡市では指定された会場に課長以上の職員が出向き、市の施策などについて説明や意見交換する出前講座を開始。行政側の説明責任という意味では当たり前のことであり、市政を市民に理解してもらい市民の声を市政に反映させることができるメリットもあります。但し、各地でも開設されていますが、当初見込んでいたほど関心度が高くなく、不人気な結果となっていることへの工夫も求められます。逆に八鹿土木事務所が学校に出かけ、道路の知識や理解を深めてもらう出前講座も開設されています。
また、兵庫県南淡町は、全職員を対象とした勤務評定の成績によって昇給時期に差をつける制度を導入しています。導入の理由について、町は仕事のできる職員ばかりに負担が集中し、仕事をしない職員との差が看過できない状況になっているとし、職員全体の資質向上を狙ったものだそうです。千葉県鋸南町の水道課主事がボクシングの日本スーパーフライ級タイトルマッチに挑戦し、公務員チャンプが生まれています。町民に夢を与えるのも公務員の仕事ですと感想を語っています。山形県大蔵村の村役場職員が東北芸術工科大学の助教授に転身した例もあります。
◆ 一般的に公務員に対しての厳しい意見として、給料に見合う仕事をしていない、何をやるにも国や県の動向次第で独自性がない、旧村意識が根強く予算のばらまき等、身内職員からも出ています。これからは政策立案能力の向上や予算の効率的配分、ハードからソフトへの転換等、大きな変革が求められていくでしょう。
また、「出る杭」型職員が増えつつある現実もあります。常に新しい課題に着目し、自分の日常業務だけにとどきらず、行政の様々な分野について、住民あるいは自治体にとってどんな仕事ができるのか改善策を出す職員のことです。限られた時間でしなければならないことは山ほどあるわけですから、従来の経験や継続の力だけでは通用しなくなります。これをクリアするためには新たな発想や構想力であり、業務を遂行できる体力です。
若い職員の柔らかな発想とアイディアを、将来のまちづくりに反映させる試みも始まっています。とかく融通の利かないお堅いイメージのお役所仕事ですが、これまでの役所特有の慣例やマニュアル的思考にとらわれず、反発する元気な若手職員も少なくありませんし、これからの中堅幹部もうかうかしていられない現実が足元まで来ています。
福岡県柳川市の全長470キロにおよぶ掘割再生で知られる広松伝さんをご存知でしょうか?1970年代、掘割にごみが目立ち、水質汚濁は限界に達したため、大半の掘割を埋め立てることにしました。当時、広松氏は都市下水路係長で、市の計画を指揮する立場です。しかし、彼は掘割は柳川の命だとして、市長の自宅を訪ねて直談判。その熱意に市長も動かされ、半年間調査することになり、埋め立て案は白紙に戻りました。市民を巻き込んでの河川浄化計画は、汚泥をさらい、ゴミを取り除き、清掃を続けることによって、かつての清流を取り戻しました。年間100万人の観光客が柳川名物の川下りを楽しむまでになったエピソードです。一度決定した公共事業をひっくり返したことで公務員に勇気を与えた話題でも有名です。広松氏は5月15日に敗血症で64歳の生涯を閉じられました・・・合掌。
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