コレクションの活用 
 vol.4  活用あってこそ、モンゴルへの真の理解が生まれる

 これらの資料は、モンゴルの長い歴史の中で生まれ育まれ、今日の世代に守り伝えられてきた貴重なモンゴル民族の財産で、モンゴルの歴史・文化等を正しく理解するために欠くことのできないものです。同時に、将来のモンゴル文化の向上発展の基礎をなすものでもあります。それゆえに活用あってこそ、モンゴルへの真の理解が生まれるものと期待しているのです。現在云々という問題だけではなく、10年や20年経過したときにこれらのモンゴル民族資料が単なる好事家の目ではなく、学問的に国内における最大のモンゴル民族資料として活用されることを期待しています。

 例えば、国内でも初めてというモンゴル民族専門の施設ができないものでしょうか。「モンゴル民族関係資料5000点」を基本資料として、地方の活性化につながるものができないでしょうか。「モンゴル博物館構想」は学問的にモンゴルセンターとしての機能を持たせたいと考えています。モンゴルを対象とする施設ですから、まずモンゴル国の流れを文化的な背景の中で紹介していくことが基本ですが、積極的にアジア全体の中で考えていきたいと思います。モンゴルを通して遊牧文化ひいてはアジアを理解しようとしている人たちにも、しっかりした研究の基礎データを提供できるようにも工夫したいと思います。

 モンゴル在勤時代は資料の収集に重点をおいていましたが、今後は教育や研究に重点をおいた展開を考えています。将来はモンゴルのみならず、中央アジアや北・東アジアを中心に地球規模で遊牧民族の生活資料など文化遺産をまとめて展示したいと考えています。厳しい環境の中で生活を営んできた遊牧民族の研究は、まだまだ断片的でしかありません。約5000点の生活資料や映像資料を活用し、遊牧民族の生活をうかがい知ることができる日本で唯一の博物館を作りたいと願っています。固定した題材をテーマとしながらも、地球規模で民族を考えていく施設を考えていきたいのです。そして、このままでは失われてしまうであろうモンゴルの生活資料を、少しでも早く記録に残し保存していくことが同じアジアの一員である隣人としての責務ではないかと強く感じているこの頃です。

 現在のモンゴル研究のテーマは多岐にわたっていますが、今後はモンゴル民族の生活を物心両面から向上させるような研究があってもいいのではないかと考えています。そのような場においてこそ、本資料が大いに活用されんことを願っています。そして生活の痕跡を刻んだ生活資料を一つでも多く保管することにより、モンゴルを思考する人たちやモンゴル人による今後の研究発展への可能性を大きく残してあげたいと願っています。

 また日本人にはアジアの事情が十分に伝わっておらず、断片的な知識によってアジア観が植えつけられていることを強く感じています。アジア理解の教材不足は誠に残念なことです。生きた外国語と今のアジアを知ることができる教材があれば、日本の若者はアジアをもっと好きになるかも知れません。日本とモンゴルで生活して感じたことは、日本人がモンゴルをはじめとするアジアのことを知らなすぎること。例えば、モンゴル人はみんな馬に乗っ思っている人も多いとか、一部の情報のみが一人歩きしているように思われます。今後、アジアとの真の交流が実を結ぶかどうかは日本側のアジア理解にかかっていると思います。