町づくりと博物館 
 vol.11  地方に暮らして世界をも視ていく思考

 文化行政で大切なことは、一律的な事業を展開し、文化の質を高めていくことも必要ですが、他とは異なった独特の個性ある文化行政を進めていくことも忘れてはなりません。全国の市町村で博物館が相次いで作られ、現在も新しいものが作り出されていますが、郷土の歴史や民俗を紹介したり、郷土を総合的に理解させていくには十分な施設かも知れませんが、これだけでは地域の住民が何度も訪れてはくれません。そこで何をやろうとしているのか長期的な展望がないと、後々の博物館運営に不都合が生じてしまいます。

 これからの地域博物館に求められていくものは、郷土だけに縛られるのではなく、世界・日本・郷土という三つの視点を基本に思考していくべきだと考えています。いわゆる理想の拠点作りです。町の博物館構想は「小さな世界だけれども、そこには大きな世界が存在する」という新しい博物館を模索していくべきです。町が従来の市町村レベルの博物館というイメージに固執するのではなく、博物学の重要性とともに、必要とされる博物館のイメージをはっきりと打ち出すべきです。まず、特色のある博物館というものがどのようなものなのか議論を尽くすべきです。そして、本当におもしろい特色のある博物館作りを進めていきたいと願っています。重要なことは、どういう楽しいものを作るかであり、ニーズのないところに刺激を与えたり、ニーズを開発していくという考え方が必要なのです。文化行政においても、量から質への転換が迫られており、地域に相応しく質の良いものであれば、文化事業としても期待されるはずです。現代においては人々は知的関心や楽しみを求めて、昔よりもはるかに大勢の人たちが、はるか遠くまで、はるかに頻繁に、博物館や美術館に足を運ぶようになっています。また、地域の学習の場として、博物館が積極的に活用されるよう、情報交換や地域との連携・協力を一層進めていかなければなりません。

 「箱もの」を作って集客する発想ではなく、先人が作った遺産に新たな財産を積み上げようという意気込みが必要だと思います。内外の学者を呼んで、「森と砂漠を結ぶ国際シンポジウム」が開催されましたが、「専門的すぎて町民には分からない」「文化でメシが食えるか」という意見も一部に聞かれましたが、もともと短時間で効果をあげることなど無理です。まずは「知的体力」をつけることから始めたほうが良いと思います。「知的体力」ができたら、今度は但東町らしさ、ローカル色を出すことで、顔を作ることです。顔がなくては誇りを持つことはできません。顔があるからこそ、但東町の未来の顔が見えてくるのです。

 また、博物館作りの中には、その利用の仕方などを説明したPR活動が、どこの市町村においてもうまく機能していません。PR活動をきちんとやらないと、「売り物」にならないのです。博物館を作ったが人は入らない、では困ります。どうしたら人が入るのか真剣に考えなくてはなりません。人が来なければ、これは利用価値がないということで、やはり具合が悪いのです。最初の宣伝活動が大切であり、いいものであれば人が必ず来るというものでもありません。きちんとしたセールスが必要になってきます。都市住民は過疎の実情も分からないで批判ばかりしています。その隙間を埋めるためには、双方が刺激し合う活動が必要になってきます。過疎からの情報を発信しながら、都市の情報をフィードバックしようとする試みが必要でしょう。都市部では、土地理解の手がかりになる風習や文化には、なかなかお目にかかれることが少ないのですが、但東町には先人から受け継いでいる素晴らしい文化や風習が残されています。これらのものとモンゴルをテーマにした先進的な町おこしはユニークだと思います。バブルがはじけ、これからの企業戦略は文化のあるものが生き残っていくという話が盛んに論じられています。地域も同じことであり、町の将来は町特有の文化の上にしか存在しないのです。