コレクションの収集目的 
 vol.1  本物の「モンゴル遊牧文化」に触れてほしい

 今世紀における産業構造や生活様式は、かつて経験したことのない変化をモンゴル民族の間にもたらしました。社会主義の進展に伴い、都市人口の過密化、地方の過疎化が進み、各種の文化財が破壊されてしまいました。とりわけモンゴル民族の生活文化財とでも呼べる民具や民芸品は、歴史上の価値や美術的・骨董的な価値も認められず、生活の変化とともにその必要性を失い、急速に破損・遺棄されてきました。これらの民具はモンゴル固有の伝統文化の本質を示すものであり、モンゴル民族の推移の理解のためには欠くことのできない重要な文化財であるといった認識に立って、資料収集を始めました。「貴重なモンゴル民族の資料を後世に残したい」という使命感に似た純粋な気持だけではありませんが、日本人のモンゴルに対する認識の低さへの怒りと抵抗でもあります。評価が決まっているヨーロッパ民芸やアメリカ絵画などと違い、アジアの美術、とりわけモンゴルの民族資料などは一般的な日本人は振り向いてもくれません。モンゴル関係の民族資料は、日本には資料が非常に数が少ないことにも起因しているように思われます。日本でのモンゴル研究の大半は、言語学を中心とするもので、一般に理解してもらうにはかなりの無理や限界があります。そこで、大人や子供たちでも理解しやすい「もの」からのアプローチが必要であると判断し、これからモンゴル文化を理解しようとする人たちへのサービスの提供も含め、視覚に訴えていく特徴のある資料作りを行なわなければと痛感してきました。新しく始めるには、普通のことをやっていたのでは到底太刀打ちはできません。しかしゼロからの出発は、しっかりした方針に沿って収集できるという点ではマイナスばかりではありません。

 また、これらのモンゴル民族の資料収集は日本の都市のみならず地方の多くの方たちに、本物の「モンゴルの遊牧文化」に触れてほしいという個人の素朴な気持から発生したものです。都会に住む子供も地方に住む子供たちも同様な立場で、異文化に触れる機会をもっと増やしてあげたいのです。地方の町に自由参加で、いささかの貢献ができないものかと意図したものが本資料群の収集基本理念です。一度に大きなことはできませんでしたが、小さなことだったからこそこつこつと資料収集を続けることができたのかも知れません。