◆ 馬頭琴というと小学校2年の国語教科書で紹介されている「スーホの白い馬」が有名です。中国内モンゴル自治区の話ですが、モンゴル国や遊牧世界には似た話が数多く残されています。ここではモンゴル国版スーホの白い馬「フフー・ナムジル」を紹介します。
◆ 昔、モンゴル西部地方にフフー・ナムジルという歌のうまい青年がいました。もともと牧民ですので、家畜を追って遠いところまで来てしまい、グンジドという駿馬に乗った美しい女性と会いました。フフー・ナムジルは一緒に馬に乗ると、一瞬にしてはるか遠い彼女のゲルに着いてしまいました。彼女の家族から厚くもてなしを受け、そのお礼として彼の知っている限りの唄を歌ってあげました。いつしか、フフー・ナムジルは残してきた妻や家族のことを思い出し、家に戻ることにしました。グンジドや彼女の家族は淋しそうな顔をしましたが、彼女の駿馬ジョノン・ハルをフフー・ナムジルにプレゼントしました。また会いたくなったら、このジョノン・ハルに乗れば、風のように一瞬にして、ここに来れることを話しました。ジョノン・ハルは翼のある天馬だったのです。フフー・ナムジルは駿馬ジョノン・ハルを使って何度もグンジドのもとへ通いました。ある日、フフー・ナムジルの妻に知られることになり、ジョノン・ハルは大きな鋏で翼を切り落とされました。そして、そのままジョノン・ハルは息絶えてしまいました。フフー・ナムジルはもう二度とグンジドに会うことができなくなり、嘆き悲しみ、ジョノン・ハルのことを思い出しながら、馬の頭のついた楽器を作りました。これが、モンゴル国版のスーホーの白い馬です。
◆ 内モンゴルはスーホーと王様との関係で馬が殺されますが、モンゴル国は不倫の果て妻に馬が殺されるというストーリーです。モンゴルを知る上で馬頭琴の役割は大きなウェイトを占めています。単なる民族楽器というだけでなく、モンゴル民族の文化や民族性を語る上で象徴的なものです。
|