◆ 市内の国営百貨店やドルショップに行くと、チェコスロヴァキアのクリスタルグラスが数多く並んでいました。当時は物不足のモンゴルでしたので、給料もらっても買える物が少なかっただけに、数少ないものを探してのショッピングが楽しみの一つでした。あそこに行くと掘り出し物が見つかったとか、珍しいビールが入荷したとか、他愛のないことで大騒ぎしていました。仕事帰りたまたま国営百貨店に立ち寄ったら、4階にある売場で見たこともないようなクリスタルのガラスコーナーができていました。安かったので、家で使う食器としていくつか購入して帰りました。それまで前任者たちが使っていた食器も数多くありましたが、すべて揃っている食器も少ないことから、クリスタルをまとめて買うことにしました。使っていて気に入ったものがあれば、そのまま日本で使ってもいいかなという気持で揃えました。
◆ 日本で先輩の家に呼ばれて遊びに行ったら、サイドボードの中に高価そうなボヘミアのグラスが大事そうに置かれていました。ウンチクをさんざん聞かせられた後、仰々しく安ウィスキーの水割りを頂きました。確かに日本では高価なボヘミアでしたが、ここモンゴルでは同じカットグラスが約5ドルから8ドル前後でした。ナッツ入れ、花瓶、グラス、皿、色ガラスを被せてカットしたものなど、チョットしたチェコグラスのコレクターになってしまいました。今でも自宅の玄関に鎮座している大きなクリスタルの花瓶は自慢の一つです。高さ60センチもある厚手のクリスタルに手作業でカットしたものです。モンゴルから日本に運ぶときも木枠を作ってもらい、頑丈に梱包して輸送しました。その後も何度か引越しを経験したせいか、口の一部に小さな傷ができてしまいましたが、我が家の玄関先を飾る顔になっています。すべてボヘミアのクリスタルばかりでしたが、所詮はガラス製品なのでいつかは壊れますが、今でも半分ほどが残り大切に使われています。日本では残念ながら、「このグラスいいものですね」と聞いてくれる人はそう多くありません。今でも国営百貨店にチェコ製品のグラスコーナーが何ヶ所か見られますが、なかなか気に入ったものも少なく、当時と比較してやや高くなっているので、なかなか手が出なくなってしまいました。
◆ ボヘミア・ガラスはチェコスロバキア西部のボヘミア地方のガラス製品の総称。この地方では14世紀からガラス窯が開かれ、16世紀末にイタリアのソーダ灰の替わりに、シュレージェン地方の森林から得る木灰をアルカリ源として高度の透明度をもつ良質のクリスタルガラスを産出するようになりました。 皇帝ルドルフ二世はボヘミアのプラハを居城としてガラス工芸を保護奨励した結果、ボヘミア・ガラスの名声はイタリアのベネチア製品をしのいでヨーロッパ中に広まったそうです。 |