卵いりませんか? 
 vol.14  たどたどしい日本語で「卵いりませんか」

 2億4千万年前、現在のようなモンゴル高原がてせきた後の最初の住人は、白亜紀の恐竜といわれています。モンゴルは世界でも有数の恐竜化石の宝庫で、特に南ゴビからは多数の化石が発見されています。モンゴル国立自然史博物館はウランバートルを代表する観光スポットとして有名です。タルボザウルスやサウロロフスなどの巨大恐竜をはじめとして、プロトケラトプスとヴェロキラプトルが闘ったまま化石になったという世界でも珍しい化石とご対面することができます。

 モンゴルが恐竜の宝庫として知られるようになったのは、1922年から30年にかけてアンドリュース率いるアメリカ自然史博物館の中央アジア調査隊が、5回にわたる調査を実施してからです。このとき世界で初めて恐竜の卵と巣が発見されました。世界の恐竜大国は1位がアメリカで、2位がモンゴルです。世界的に有名な恐竜化石産地であるゴビ砂漠がある中央ゴビ県、南ゴビ県、バヤンホンゴル県などから多くの恐竜化石が発見されています。

 ゴビ砂漠と聞けば、草も木もない荒涼とした砂漠をイメージされる方も多いでしょう。しかし、恐竜の生きていた白亜紀は水の豊富な緑豊かな楽園だったと考えられています。なぜなら、その証拠として沼や池に住む淡水性のカメやスッポン、トカゲ、ワニなどの化石も数多く発見されているからです。大きな湖や河川が広がり、ソテツイチョウの森林では草食恐竜が草を食み、それを狙った肉食恐竜が闊歩していた、そんな映画「ジェラシックパーク」を彷彿させる光景が広がっていたようです。

 ゴビ砂漠は60種類以上の恐竜が発見されており、別名「恐竜銀座」として世界的に有名です。株式会社林原ではモンゴルとの合同調査を継続しており、近い将来には岡山駅の駅ビルに自然史博物館が開館される運びになっています。ウランバートル郊外に住んでいるモンゴルの友人宅で、ゲルの隅に置かれていた棚の上には大事そうな石の塊がありました。

 おもむろに出してきた石の塊は、何と恐竜の卵化石だと説明してくれました。よく眺めてみると、卵の殻らしいものがあり、明らかに卵だと分かりました。ゴビ砂漠では恐竜の巣がそのままの状態で見つかることもあります。こぶし大の卵化石は赤い色をしており、サウロロフスと呼ばれる草食恐竜ではないかと話していました。細長い10cm程のものは角竜プロトケラトプスの卵だそうです。自由市場ザハで日本から来た観光客を見つけては、たどたどしい日本語で「卵いりませんか」と次から次に声をかけていました。それが恐竜の卵化石だとは誰も信じておりませんでしたが、実物を見て500$という値に安いと納得しながら買い求めた観光客は、空港税関で没収されるとも知らずに得意げな顔をしていました。

 モンゴル滞在中にお世話になったというモンゴル人親子が、帰国前夜に官舎まで訪ねてくれました。生涯の友人の証として、土産を持ってきたので是非とも日本に持ちかえってくれとやって来たのです。3人で運んできた大きな袋には、何と長さ70cm程で、重さが40kg以上もある恐竜の大腿骨の化石が入っていました。持って帰れるものなら日本に持ち帰りたいところですが、空港の税関を通すことはできないので、今回は気持だけ頂戴することにし、別れの杯を交わして今日は帰ってもらいました。帰国の餞別に「恐竜の大腿骨」とは、さすがに誰ももらったことはないでしょう。