◆ ようやく生活ができるようになると、今度は慣れない仕事が待っていました。勤務していた日本大使館を簡単に紹介しますと、場所的には政府庁舎の北西側に位置し、旧国立中央博物館の並びにありました。現在の新しい日本大使館はモンゴル外務省の南側で景観の良いウランバートルでも一等地ですが、古い大使館は現在のJICA事務所になっている所です。正面玄関は表通りに面していますが、西隣は造幣局、南側は幼稚園が隣接しています。大使館の建物は古い学校宿舎を改造したもので、中央の通路を挟んで小さな部屋が並んでいます。大きく西側は大使の公邸、東半分は大使館事務所として使われていました。裏側にはテニスコートよりも広い裏庭があり、温室・洗濯室・食料庫・ガレージ・発電装置が設置されています。事務所は玄関入口を入ると、すぐに私の部屋があり領事と在外公館警備を担当していました。その奥に現地職員の部屋があり、通訳とタイピストが控えています。事務所入口にはカード式の電気錠が掛けられており、日本人職員以外は内部に入れないシステムになっていました。1階には参事官室・政治経済担当・会計庶務担当が入り、2回には大使室・儀典担当・文化広報担当・電信室・文書室・医務官室がありました。基本的には各担当者に一室の割合で自分のペースで仕事ができる環境でしたので、国内での事務所環境を考えると贅沢そのもの。ただ、小さな大使館では一人で兼務する業務量も多く、書類の山に囲まれるというのが現状です。
◆ 勤務時間は任国に合せられることも多く、モンゴルでは朝8時30分から午後6時。昼休みは12時30分から午後2時30分までの2時間という長さです。おかげで大使館の横並びにあった中央博物館に毎日のように通うことができました。約1時間はたっぷりと見学しながらメモを取ることができ、但東町でモンゴル博物館を開館させるときの基礎になったことは事実です。とは言いながら、実際には大使館の勤務はかなり不規則で、いくら残業しても残業手当が支給されることはありません。
仕事に関しては、領事と警備が主な仕事になりました。領事業務ではビザの発給・旅券発給・邦人援護など、警備関係では任国犯罪情報の収集・テロ対策・公館警備対策・保秘対策などの業務が担当です。それ以外にも庶務的な業務があり、空港まで関係者の送迎、滞在期間中のアテンド、観光案内なども交替で対応していました。国内では馴染みのない仕事ばかりに戸惑うことも度々です。赴任当初はビザの発給もそう多くありませんでしたが、日に日に申請書が増えるようになり、日中は大半がビザに関する業務が占めました。申請書の確認、審査確認、本省への問合せ、発給、報告書作成という仕事が延々と続きました。また、日本人がパスポートを盗難まれたり紛失してしまい、帰国できない人たちも多く、「帰国のための渡航書」発行も結構ありました。在留邦人の困りごと相談などもあり、渡航者の数も今とは違い比較的親身になって対応できたと思っています。どこの大使館も職員対応が悪いなどとよく聞こえてきますが、けして全てではありません。
◆ この領事以外にも、夜間の宿直がありました。大使館の半分は大使の住まいである公邸と一緒でしたので、週の半分ほどは宿直、そして日中は平常勤務というかなりきつい仕事でした。確かに仮眠はとりますが、熟睡はできませんでした。赴任して3ヶ月半後には海部首相が西側としては初めてモンゴルを訪問することになり、通常業務に加えて警備対策の仕事が加わりました。毎日が初めての仕事ばかりでしたので、新鮮さはありましたが心身ともに結構疲れ切っていました。 |